月下の逢瀬
うん、きっとあたしの頭は、どこかまともに機能していないんだ。
今この瞬間、あたしの頭を満たしていたのは、理玖が片桐先生に『嫉妬』しているということへの、喜びだけだった。
理玖が、怒りを覚えるほど、嫉妬してくれている。
それは、あたしを少しでも想ってくれているということ、だよね?
それだけで、今までの言いようのない不安が霧散していく。
「何もないよ。あたしもびっくりしたけど、きっと先生が理玖をからかっただけだよ。
理玖とあたしのこと、誰にも知られるはずないじゃない」
にこ、と笑って言った。
「もしかして理玖、それを聞くためにこんなに早く来てくれたの? 文化祭の打ち上げは、どうしたの?」
「打ち上げ? あんなの、さっさと抜けてきた。
そんなことより、本当か? あれは片桐の悪い冗談なんだな?」
理玖の口調が幾分和らいだ。
やっぱり、クラスの打ち上げを放って来てくれたんだ。
そこにはきっと、玲奈さんもいただろうに。
あたしは理玖の首に抱きつくように腕を絡めた。
「悪い冗談だよ。だって、『先生』だよ? あたしなんか見たりしないってば。
それに、あたしは理玖しか見てないもん」
今この瞬間、あたしの頭を満たしていたのは、理玖が片桐先生に『嫉妬』しているということへの、喜びだけだった。
理玖が、怒りを覚えるほど、嫉妬してくれている。
それは、あたしを少しでも想ってくれているということ、だよね?
それだけで、今までの言いようのない不安が霧散していく。
「何もないよ。あたしもびっくりしたけど、きっと先生が理玖をからかっただけだよ。
理玖とあたしのこと、誰にも知られるはずないじゃない」
にこ、と笑って言った。
「もしかして理玖、それを聞くためにこんなに早く来てくれたの? 文化祭の打ち上げは、どうしたの?」
「打ち上げ? あんなの、さっさと抜けてきた。
そんなことより、本当か? あれは片桐の悪い冗談なんだな?」
理玖の口調が幾分和らいだ。
やっぱり、クラスの打ち上げを放って来てくれたんだ。
そこにはきっと、玲奈さんもいただろうに。
あたしは理玖の首に抱きつくように腕を絡めた。
「悪い冗談だよ。だって、『先生』だよ? あたしなんか見たりしないってば。
それに、あたしは理玖しか見てないもん」