月下の逢瀬
きゅ、と腕に力を込めると、理玖が応えるように抱きしめ返してくれた。


「そか。ちょっと俺、逆上してたかも。
片桐が真緒に触れたとき、すっげームカついた」


「本当?」


理玖の顔を覗きこむと、再び唇を寄せられた。
さっきとは違う、優しくついばむようなキス。


「……ん。真緒は俺のもんだって、言いそうになった」


「理玖……」


体の奥が、ジンと痺れる。
愛おしさに、流される。


この瞬間が続くなら、何も怖くない。
片桐先生のことも、玲奈さんのことも。

誰にも侵されないこの時間の為なら。


「理玖、好き。大好き」


「ん」


挿し入れられる舌、それを受けたときに、風がふわりと入ってきた。
揺れるカーテンに気付いた理玖が、あたしを抱く片手で、窓を閉めた。

夜空には、弱々しい光を放つ月が見え、それは理玖が荒々しく閉めたカーテンの向こうに消えた。


「真緒……」


重ねられる体に、心地よい重さを感じながら、目を閉じる。
眼裏に残った月が、光っていた。


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