月下の逢瀬
佐和の遺書の話を聞いて、俺はようやく自分の犯した恐ろしい罪に気が付いた。


『兄貴と心中でもしなきゃ、そばにはいられないよ』


佐和にそう言った。
俺が、ぶつけた言葉。

そのせいで、佐和は兄貴を連れて死んだのだ。
死しか二人を繋げないと、俺が言ったから。



俺が感情に任せて馬鹿なことを口走ったせいで、二人を殺した。



気付いた瞬間、足ががくがく震え、闇へと引きずりこまれるような恐怖に包まれた。


佐和は、兄貴は、俺が殺したんだ。




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