月下の逢瀬
見上げるあたしに構わず、彼女はブレザーを脱ぎ、ブラウスのボタンに手をかけた。


「れ、玲奈さ」


「理玖はあたし以外、誰のものにもならない。
これがその印し」


瞬く間にブラウスも脱ぎ捨て、下に着ていたキャミソールも同じように足元にはらりと落ちた。
そして、ブラ一枚になった背中を、見た。


真っ白な肌に、赤紫の傷。
縫合跡らしい、いくつも走ったそれは、所々引き攣れを起こしていた。
一体、どうしたらここまでたくさんの傷痕になるの?
綺麗なラインを描いた腰まで、その線は流れていて。


「こ、これ……」


「理玖がつけた傷。理玖とあたしを繋ぐ傷。
よくみなさいよ」


言葉の出ないあたしに、畳み掛けるように玲奈さんは言う。


「理玖は、この傷がある限りあたしの側から離れられない。
一生をかけて償うって、言ったもの」


傷痕を凝視しているあたしを見て、玲奈さんは満足そうにくすりと笑った。
それからキャミソールを拾い上げて、ゆっくりとそれを身につけた。



「ねえ? 覚えてるよね、あの夏休み明け。
噂は本当よ。あたし、この傷と引き換えに理玖のそばにいられるようになったの」


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