月下の逢瀬
「本当、だったんだ。でも、理玖がそんな酷いこと……」


するわけない、だけど。

知らず、声が小さく震えた。
あたしは今、恐ろしい告白を聞かされている。


「プールサイドの横は、不燃物置場だったでしょ? よく、割れたガラスやなんかが置かれていた。

そして、あの年はフェンスの取り替えで、プールサイドと不燃物置場を遮るものは無かった」


玲奈さんは少し愉快そうに言って。
あたしは記憶に残っている中学校のプールを思い出していた。
確かに、プール横には不燃物置場があったけど……、ずいぶん高さがあったんじゃなかった?
プールから見下ろす位置だったことを思い出す。


「最初は、ただ告白するためだけに理玖を呼び出したんだ。
けど、理玖は全然興味なさそうで、むしろ嫌がってた。

悔しくて、でも理玖を手に入れたくて。理玖があたしに背中を向けた瞬間、視界の端に支柱だけが残ったフェンスが見えた。

……ここから落ちたら、理玖だってあたしを心配するんじゃない?

そう、思い付いたの」


玲奈さんはにこ、と笑った。


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