月下の逢瀬
「理玖にわざと抱きついた。
……きっと振り払われるだろうから。
案の定、理玖はあたしを離そうと強く体をよじってきた。
だから、よろけたふりをして、そのまま落ちたのよ。
下にあんなにガラス片があったのは予想外だったけどね。
激痛に気を失ったんだけど、あたしを見下ろしてる理玖を覚えてる。
今のあんたみたいに真っ青だった」
ボタンを留め、ブレザーの袖に手を通す。
「意識が戻ったのは病院のベッドの上だった。
『償いたい』って、理玖が言ってくれた。だから、理玖が欲しいって答えたの。この傷をあたしは一生背負うから、理玖も一緒に、一生背負って、そう言ったのよ。
幼なじみだから知ってるかもしれないけど……、理玖はすごく優しいでしょ。
どう答えたのか、言わなくても分かるよね?」
「そんな……。
そんなの、本当にいいと思ってる?
玲奈さんはそれで満足できるの?」
傷を楯に言うなりにさせて。
理玖の気持ちはどうなるの?
そんなあたしの言葉に、玲奈さんはすう、と目を細めた。
「もちろん、満足してるよ。
だって結果的に理玖はあたしだけのものになってるじゃない?
でも、そうね、無理矢理付き合いだしたようなもんだし、そう言われても仕方ないか。
あのね、理玖は今まで一言も嫌だなんて言ってないよ。
それどころか、玲奈が好きだ、って言ってくれる。
抱きしめてくれるし、この傷にキスしてくれる。
きっかけはどうあれ、今はあたしたちは想いあって付き合ってるんだから、いいでしょ?
ま、『浮気』されちゃったけどね」
……きっと振り払われるだろうから。
案の定、理玖はあたしを離そうと強く体をよじってきた。
だから、よろけたふりをして、そのまま落ちたのよ。
下にあんなにガラス片があったのは予想外だったけどね。
激痛に気を失ったんだけど、あたしを見下ろしてる理玖を覚えてる。
今のあんたみたいに真っ青だった」
ボタンを留め、ブレザーの袖に手を通す。
「意識が戻ったのは病院のベッドの上だった。
『償いたい』って、理玖が言ってくれた。だから、理玖が欲しいって答えたの。この傷をあたしは一生背負うから、理玖も一緒に、一生背負って、そう言ったのよ。
幼なじみだから知ってるかもしれないけど……、理玖はすごく優しいでしょ。
どう答えたのか、言わなくても分かるよね?」
「そんな……。
そんなの、本当にいいと思ってる?
玲奈さんはそれで満足できるの?」
傷を楯に言うなりにさせて。
理玖の気持ちはどうなるの?
そんなあたしの言葉に、玲奈さんはすう、と目を細めた。
「もちろん、満足してるよ。
だって結果的に理玖はあたしだけのものになってるじゃない?
でも、そうね、無理矢理付き合いだしたようなもんだし、そう言われても仕方ないか。
あのね、理玖は今まで一言も嫌だなんて言ってないよ。
それどころか、玲奈が好きだ、って言ってくれる。
抱きしめてくれるし、この傷にキスしてくれる。
きっかけはどうあれ、今はあたしたちは想いあって付き合ってるんだから、いいでしょ?
ま、『浮気』されちゃったけどね」