月下の逢瀬
先生は、優しい。
最初の時のような強引なことはしなくて。

ただ、側にいてくれる。
あたしの隣で、話を聞いて、笑ってくれる。

それに、理玖と何があったのか、どうして別れたのか、聞かないでいてくれる。


その優しさが嬉しくて、あたしは甘えてしまっている。

手を握られても、その温もりが嫌じゃなくて。
隣にいるその存在感に、頼りそうになってしまう。



見上げると、それに気付いた先生が、ん？　と眉をあげる。
それに首を振って、曖昧に笑いかえした。



この優しさに答えたら、あたしは幸せになれるんだろうか。
この手の温もりに答えたら。




理玖を忘れられるんだろうか。



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