月下の逢瀬
「大丈夫? 寒くないか?」


「平気。それに、さっきよりも楽になったから」


帰りの車の中。
先生が心配そうにあたしの額に手をあてた。


「熱は、ないな」


「先生、心配しすぎ。あたしはいいから、ちゃんとハンドル握ってて」


くすくすと笑って言うと、先生も小さく笑った。


「大丈夫そうだな、よかった」


窓の向こうは、相変わらず雪がちらついていた。
積もる心配はなさそうだけれど。


「それにしても、1月に入ってから雪がよく降るな」


「寒い日が多いよね。早く春にならないかなあ」


小さなため息をついたあたしに、先生が呟くように言った。


「春になったら、か。
そしたら俺は椎名の先生じゃなくなるな」


「え?」


「上野先生、復帰されるんだよ。だから俺は2月いっぱいでおしまい」


「忘れてた。臨時教員だったんだよね。そっか……」


「寂しい?」


「え!? や、寂しいとか寂しくないとかそんな」


笑いを含んだ声に、慌てて横顔を見た。


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