月下の逢瀬
「ん……。みず……」
ベッドの枕元に置いておいたペットボトルに手をのばす。
ミネラルウォーターを喉に流し込んで、大きく息を吐いた。
「はい。理玖」
「ん」
差し出すと、理玖は喉をならしてそれを一息に飲んだ。
その姿を見ながら、ベッドに体を横たえる。
今は何時だろう。
まだ夜明けには早いはず。
まだ、理玖と一緒にいられるはず。
時計が掛けられている壁に目を凝らしていると、理玖が毛布をかけてくれた。
「ありがと」
理玖と離れた体は、さっきまで熱いくらいだったのに、少しずつ冷えていっていた。
その横に、理玖がするりと入ってくる。
暖かい毛布の中で、あたしは理玖に抱きつくようにしてくっついた。
「真緒」
「なに?」
理玖はあたしの髪、理玖が好きだからとずっと伸ばしている髪を手で梳きながら、優しく名前を呼ぶ。
「眠たい?」
「少しだけ。理玖は?」
「大丈夫。
真緒はもう寝ていい。俺は後で勝手に帰るから」
さっきまであんなに荒ぶっていたのが嘘かのような柔らかい仕草、優しい声。
理玖はいつも激しいばかりではない。
あたしを物のように抱いて帰ることもあるけれど、こうして穏やかな時間を過ごすこともある。
時には痛みを感じさせる手も、ゆっくりとあたしを撫でてくれる。