月下の逢瀬
・.
・
「先生、ありがとう。理玖にちゃんと言う」
「うん」
呟くように言ったあたしに、先生が頷いた。
――ぽつんぽつんと理玖と玲奈さんの話をするあたしに、先生はずっと付き合ってくれた。
胸にずっとしまっていた二人の秘密、それと自分の罪を吐き出すことで、気持ちが軽くなったような気がした。
『あたしが悪いの』
せめて、婚約なんて話を聞いた時点で別れるべきだった。理玖が言わないのをいいことに、知らないフリをしてきたの。
そう言うあたしを、ずっと撫でてくれた――
温かなその手は、今も背中に添えられている。
「……先生、あたしもう先生に甘えられない」
背中の手を、そっと押しやった。
あんなことを言ったあたしが、この温もりに甘えるのは都合がよすぎる。
これ以上、卑怯で情けない自分でいたくない。
「明日ちゃんと理玖と話す。それからのことは理玖と考える。
理玖がダメだったら……両親に相談する。
だからもう大丈夫だから。あたしのことはもういいよ」
「もういい、って、椎名……」
「これ以上先生に頼れない、よ。ううん、頼っちゃダメなんだよ」
このまま先生の側にいたら、あたしはずっと甘えてしまう。
依存してしまう。
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「先生、ありがとう。理玖にちゃんと言う」
「うん」
呟くように言ったあたしに、先生が頷いた。
――ぽつんぽつんと理玖と玲奈さんの話をするあたしに、先生はずっと付き合ってくれた。
胸にずっとしまっていた二人の秘密、それと自分の罪を吐き出すことで、気持ちが軽くなったような気がした。
『あたしが悪いの』
せめて、婚約なんて話を聞いた時点で別れるべきだった。理玖が言わないのをいいことに、知らないフリをしてきたの。
そう言うあたしを、ずっと撫でてくれた――
温かなその手は、今も背中に添えられている。
「……先生、あたしもう先生に甘えられない」
背中の手を、そっと押しやった。
あんなことを言ったあたしが、この温もりに甘えるのは都合がよすぎる。
これ以上、卑怯で情けない自分でいたくない。
「明日ちゃんと理玖と話す。それからのことは理玖と考える。
理玖がダメだったら……両親に相談する。
だからもう大丈夫だから。あたしのことはもういいよ」
「もういい、って、椎名……」
「これ以上先生に頼れない、よ。ううん、頼っちゃダメなんだよ」
このまま先生の側にいたら、あたしはずっと甘えてしまう。
依存してしまう。