月下の逢瀬
翌日、気持ち悪さを抱えたまま登校した。

決めたからには、早く行動した方がいい。
遅く延ばしてしまえる話じゃ、ない。


朝、昇降口で先生と会った。
あたしを見て、少し心配そうに眉根を寄せて。


「椎名、大丈夫なのか。昨日、具合悪かっただろ」


先生の顔で言った。


「はい。心配おかけしてすみません」


「そうか……。頑張れよ」


ぺこりと頭を下げて、通り過ぎた。



教室に入ると、先に来ていた結衣があたしに気付いた。


「真緒、大丈夫? 休むかと思った」


「ん。心配かけてごめん。帰ってからずっと寝てたから、メールにも気付かなくて」


結衣から体を気遣うメールが何件も入っていたのだ。


「いいって、そんなの。学校来て、大丈夫なの?」


「ん。軽い風邪だったみたい。寝たらずいぶんよくなった」


えへへ、と笑ってみせると、結衣はホッとしたようにため息をついた。


「マジで心配してたんだよー。気を失うなんてよっぽど具合悪かったんだなって」


「本当にごめんね。荷物持ってきてくれたのも結衣でしょ?」


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