月下の逢瀬
けれど、あたしの態度は玲奈さんの怒りを助長しただけのようだった。


「今だに理玖を見てるの、知ってるんだよ? いい加減諦めなさいよ、しつこいのよ!」


早口でまくし立てるように言い、嘲笑うようにあたしを指差した。


「あんなみっともない真似、二度としないで。あんたが倒れたって、理玖は何とも思わないんだから。
あんたのことなんて、迷惑なだけなんだからっ」


「…………そう、なのかな」


むくり、とどす黒い感情が湧いた。
目の前にいる玲奈さんが、『憎い』と初めて思った。

じ、と見据えるあたしに、玲奈さんの言葉が詰まった。


「あ、当たり前じゃない。理玖はもう」


「あたし、妊娠してるの」


無意識に、お腹に手をあてていた。


「……え?」


「お腹に赤ちゃんがいるの。具合が悪かったのは、つわりだよ。
理玖は知ったらどうするかな?」


玲奈さんに言うべきではないのはわかっていた。
だけど、言わずにはいられなかった。


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