月下の逢瀬
暖かな車内。
シートに身を預けて、あたしはさっきからずっと握ったままのこぶしを見つめていた。


「気分悪くないか? 具合は大丈夫か?」


「ん……、平気」


「そうか。家についたらあったかくしてな」


「ん……」




――校門から少し離れたところで、先生の車に乗った。
パトカーもいなくなった校内の駐車場を見ると、教職員の車はまだ沢山停まっていて。

先生は帰られるの? と聞いたら、実家の病院に行くんだ、と答えられた。


『久世が搬送されたのが、うちだから』、と。


びくりと固まったあたしに、先生は続けた。


『別棟の屋上から久世は飛び降りたんだが、下には駐車場の屋根があったんだ。
それがクッションの役割を果たして、衝撃が抑えられた。
久世は……助かるかもしれない』


『本当に!?』


『さっき病院に確認した。まだオペ中だから、断言はできないけど、な』


『そう……』


どうか、玲奈さんが助かりますように。
お願いします。

俯いて、両手を握り合わせた。


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