月下の逢瀬
玲奈さんが別棟から転落してから、三日が経った。

二日間学校を休んだあたしは、
日増しに酷くなる悪阻(つわり)を隠しながら登校した。


冬の朝のぴんと張りつめた空気は、幾分吐き気を和らげてくれる。
けれど、心は重たく沈んでいた。



玲奈さんは今だに、意識を回復していない。



先生から最初の連絡がきたのは、あの日の夜更けだった。

肋骨など、複数ヶ所を骨折していること。
折れた骨によって肺を損傷していること。

『脊椎を痛めているから、歩行にも問題が出るかもしれない』


淡々と告げられる、凄惨な状態に息を飲んだ。


『だか、命に別状はない。あとは意識の回復を待たないといけないが。
脳波に異常はないそうだから、早く目覚めてくれるといいな』


『よかった……』


もし玲奈さんに万が一のことがあったら、と不安に潰されそうになっていた。

酷い状態だとはいえ、命はあるという一筋の光に、安堵の涙が流れた。


『それと……、宮本は久世の意識が回復するまで、側につくそうだ』


『……そう』


躊躇いながらの言葉に、小さく答えた。


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