月下の逢瀬
それから、特に変わったこともなく昼休みになった。
クラスメイトの様子を窺ったけれど、普段よりも少し雰囲気が違うだけで、
それもあたしの勘違いかもしれない、というくらい微かな変化だった。


そして、心配していた理玖と玲奈さんの話題は、全く無かった。

理玖の幼なじみということで、これまで女の子たちから質問を受けることがあった。
だから、今回ももしかしたら何か聞かれるかもしれないと気にしていたのだ。


三日も経つと、興味がなくなってしまうものなの?
玲奈さんは今も目覚めていないのに。


言いようのない切ない思いが胸を刺した。


「……真緒。昼ご飯、別の場所で食べない?」


小さなため息をついていると、結衣が振り返って聞いた。


「うん、いいけど……?」


色んな食べ物の匂いが充満する教室よりも、別の場所の方が楽だし。


「じゃ、行こう」


バッグを持って、結衣はあたしの手をとった。
ぐいぐいと引く結衣に引かれるようにして、あたしは教室を後にした。


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