月下の逢瀬
講堂横の中庭には、花壇を取り巻くようにしてベンチが置かれている。
春先にはここで昼食をとる生徒が多いのだけれど、
今日はあたしたち以外には二組しかいなかった。

結衣はその二組からも離れたベンチに座った。


「結衣、どうしたの? 今日、様子おかしいよ」


早足の結衣に引かれていたせいで、息が軽く上がっていた。


「真緒……、何で休んでたの?」


目の前に立つあたしを見上げて聞いた結衣の顔は真剣だった。


「か、風邪だよ? 前から調子悪かったでしょ、あたし」


「ホントに? 久世さんのことと関係があるんじゃない?」


「……え?」


「真緒と理玖くん、何かあるんじゃないの?」


どくん。
心臓が潰れそうな衝撃。


「な、何? 何でそんなこと聞くの?」


「久世さんのケータイを、一年の女の子が拾ったんだって。
メール内容見たって、言い触らしてる。性格悪いよね」


それはまあ置いといて、と結衣は言葉を切って、あたしをじっと見た。


< 248 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop