月下の逢瀬
「彼女、飛び降りる寸前にメールを送信してたんだって。誰に宛てたメールか、わかるよね?」
「…………」
「コウタが言ってた。真緒が慌てた様子で理玖くん連れてった、って。
久世さんがあんなことになる、少し前に」
結衣はあたしから何も見落とすまいとするかのように、
視線を逸らさない。
言い逃れできない。
深く息を吐いて、頷いた。
「……理玖、でしょ?」
人が落ちたぞ、という叫び声が響いた直前。
理玖のケータイが鳴った。
理玖はケータイを開いて、玲奈さんの名前を呼んだのを覚えている。
「メールの内容は、真緒は知ってるの?」
「知らない。理玖はすぐに行っちゃったから」
首を横に振る。
結衣はそれを信じてくれたのか、ようやく瞳を逸らした。
ふう、とため息をついて。
「あのね……。
『椎名ちゃんと幸せになるところなんて、見たくない。椎名ちゃんが憎いよ』
だって」
教科書を読むように、抑揚のない声で言った。
それからあたしを再び見上げて、
「校内中、真緒が久世さんから理玖くんを盗った、って噂が流れてるんだ」
と言った。
咄嗟に思い出す。
今朝の教室の違和感は、全てあたしに向けられていたものなんだ。
「…………」
「コウタが言ってた。真緒が慌てた様子で理玖くん連れてった、って。
久世さんがあんなことになる、少し前に」
結衣はあたしから何も見落とすまいとするかのように、
視線を逸らさない。
言い逃れできない。
深く息を吐いて、頷いた。
「……理玖、でしょ?」
人が落ちたぞ、という叫び声が響いた直前。
理玖のケータイが鳴った。
理玖はケータイを開いて、玲奈さんの名前を呼んだのを覚えている。
「メールの内容は、真緒は知ってるの?」
「知らない。理玖はすぐに行っちゃったから」
首を横に振る。
結衣はそれを信じてくれたのか、ようやく瞳を逸らした。
ふう、とため息をついて。
「あのね……。
『椎名ちゃんと幸せになるところなんて、見たくない。椎名ちゃんが憎いよ』
だって」
教科書を読むように、抑揚のない声で言った。
それからあたしを再び見上げて、
「校内中、真緒が久世さんから理玖くんを盗った、って噂が流れてるんだ」
と言った。
咄嗟に思い出す。
今朝の教室の違和感は、全てあたしに向けられていたものなんだ。