月下の逢瀬
足元がぐらついた。
目の前が暗くなる。

半年間、隠していた秘密。

誰にも気付かれないように、大事に守ってきたのに。

あたしの部屋という狭い小箱に、そっと紡いだ逢瀬が、暴かれそうになっている。


「久世さんがあんなことになってるから、真緒を責める人たちがいるんだ。
それに、理玖くんのことも。
二人とも、自殺に追い込むなんて最低。
真緒は、卑怯だって……」


みんな、好き勝手言うんだよ。結衣は自分がそう言われているかのように、辛そうに顔を歪めた。


「真緒が、理玖くんとのことを言えなかったのは、わかるよ。それを責めるつもりなんかない。

だけど、噂が広まってしまってる以上、あたしには本当のこと教えて? あたしは真緒の味方だし、手助けしたいんだ」


「結衣……」


真剣な瞳。
黙っていたあたしに、そんな事を言ってくれることが嬉しくて、胸が熱くなる。



だけど。


下唇をきゅ、と噛んだ。


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