月下の逢瀬
・.
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バスの車窓の向こうに、片桐病院の姿が現れた。
一番後ろの席で揺られていたあたしは、それを重たい気持ちで見つめていた。
気持ちのやり場がなくて、つき動かされるように来たけれど。
どうしてここへ来たんだろう。
膝にのせた花束を見下ろした。
バスに乗る前に買ったそれは、淡いピンクや黄色の花でまとめられていて、華やか。
その鮮やかさに、目を閉じた。
あたしが玲奈さんのお見舞いだなんて、許されるの?
『人殺し』
投げつけられた言葉が甦る。
無邪気な笑い声の中に紛れた、悪意。
向けられた刃は深く胸に刺さった。
確かに、あたしはそう呼ばれても仕方ないのかもしれない。
『玲奈は子供を産めない体なんだ』
あの時、去り際に理玖が残した台詞。
あたしは玲奈さんに残酷な告白をしたんだ。
玲奈さんが愛してると言った、理玖の子を妊娠した。
玲奈さんが産めない子を。
それは、死を迫ったようなものなのかもしれない。
でも。
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バスの車窓の向こうに、片桐病院の姿が現れた。
一番後ろの席で揺られていたあたしは、それを重たい気持ちで見つめていた。
気持ちのやり場がなくて、つき動かされるように来たけれど。
どうしてここへ来たんだろう。
膝にのせた花束を見下ろした。
バスに乗る前に買ったそれは、淡いピンクや黄色の花でまとめられていて、華やか。
その鮮やかさに、目を閉じた。
あたしが玲奈さんのお見舞いだなんて、許されるの?
『人殺し』
投げつけられた言葉が甦る。
無邪気な笑い声の中に紛れた、悪意。
向けられた刃は深く胸に刺さった。
確かに、あたしはそう呼ばれても仕方ないのかもしれない。
『玲奈は子供を産めない体なんだ』
あの時、去り際に理玖が残した台詞。
あたしは玲奈さんに残酷な告白をしたんだ。
玲奈さんが愛してると言った、理玖の子を妊娠した。
玲奈さんが産めない子を。
それは、死を迫ったようなものなのかもしれない。
でも。