月下の逢瀬
「俺と玲奈が付き合うようになった理由は、聞いた?」
「背中の……傷のことなら」
「そっか」
自嘲気味にくすりと理玖が笑った。
「酷いだろ。一生残るんだ、あれ。
あいつ、あんな傷作ってまで俺といたいって、馬鹿だよな」
「……え? 知ってた、の」
玲奈さんがわざと怪我したこと。
驚いてその横顔を見た。
「そんなに強く拒絶するわけがないだろ。あの時、玲奈は大袈裟によろめいて、落ちたんだ。
だけど、俺は玲奈の話に、のった。
あいつは誰にも必要とされていなくて、たった一人だったから」
理玖は目の前の水面に視線をやって言った。
けれど、その瞳は昔を振り返るように、遠くを見つめていて。
あたしはただ、横で黙って聞いていた。
「背中の……傷のことなら」
「そっか」
自嘲気味にくすりと理玖が笑った。
「酷いだろ。一生残るんだ、あれ。
あいつ、あんな傷作ってまで俺といたいって、馬鹿だよな」
「……え? 知ってた、の」
玲奈さんがわざと怪我したこと。
驚いてその横顔を見た。
「そんなに強く拒絶するわけがないだろ。あの時、玲奈は大袈裟によろめいて、落ちたんだ。
だけど、俺は玲奈の話に、のった。
あいつは誰にも必要とされていなくて、たった一人だったから」
理玖は目の前の水面に視線をやって言った。
けれど、その瞳は昔を振り返るように、遠くを見つめていて。
あたしはただ、横で黙って聞いていた。