月下の逢瀬
「父親のいない、まだ高校生のあたしの子なんて、誰も祝福してくれないかもしれない。
誰も望まないかもしれない。

だけど、あたしだけはこの子が産まれてくることを願いたいの」


「……そうか」


ふ、と先生が息を吐いて、表情を引き締めた。


「聞きたくないかもしれないけど、言う。

父親がいないことで、子供に辛い思いをさせるかもしれない。
椎名も、一人で父親の分まで苦労しなくちゃいけない。

人を育てるっていうのは、簡単じゃない。
一人での育児なんて、尚更のことだ。

それは、わかるな?」


「……うん、わかる」


こくりと頷いた。
先生の言うことは、正しい。
今この感情のままに赤ちゃんを産めば、辛い現実が待ってるだろう。
あたしの想像している以上の問題が襲ってくるかもしれない。


「でも。でもね、先生。
どんなに辛いことがあっても、あたしはこれから先、『産んだ後悔』だけはしない。
どんなことがあっても、この選択をした自分を責めたくない。

あたし、頑張るよ。どうやってでも、育ててくよ。

『産まなかった後悔』をするくらいなら、何でもやれると思うの」


「…………」


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