月下の逢瀬
「もう眠たいかな? 帰らないとな」


あたしを見上げる理玖が、優月の背中に聞いた。
愛おしそうなその瞳に、あたしはさっきの言葉の続きを問うた。


「だから……?」


その眼差しが、あたしに向けられた。


「だから。

俺はずっと、心の真ん中で、真緒のことを想う。

欲しくてたまらなかった真緒を、多分一生欲したまま生きてくんだと思う」


揺るがない、真っすぐな瞳。
躊躇いもない、強い言葉。


「今までも、これからも。
玲奈と結婚しても、心は真緒を求めるんだ。

忘れられないなら、もう忘れない」




『欲しいのは真緒だけ』
いつかに欲した言葉。
あんなに望んだ言葉。


でも、どうして今、そんなことを言うの。



「会えてよかった。
会わずにいたら、まだもやもやと考え込んでたと思う。

さっき真緒を見た瞬間、自分の中の気持ちを確信できたから」



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