月下の逢瀬
おずおずと近寄ったあたしの腕を、ふいに理玖が掴んだ。
力任せに引き寄せられて、ベッドに倒れ込んだ時には理玖の下に組み敷かれていた。


「……未だに緊張してんの?」


「……少しだけ」


こんなの、馴れるわけがない。
馴れたく、ない。

これが長く続く幸せな夜だと言うのなら、馴れもいいのかもしれないけど。

そうじゃないから、いつも初めてのようにしていたい。たった一回だけ、そんな気持ちでいたい。



理玖の唇が、あたしの首筋から下へと流れてゆく。
すらりと長い指が、あたしを鳴らす。

声を殺して悶えるあたしを見下ろす理玖は、いつも意地悪で、


「もっと声出せば? 周りに聞こえるくらい」


と囁きながら、攻める手を休めない。


理玖に与えられる快感と、かすかな痛み、そして悲しさが混ざって、あたしはいつも最後には泣いてしまう。


「真緒、もっとよがってみせて」


理玖はそんなあたしをいたぶるのをいつまでも止めなくて、
蜜のように濃くとろりとした夜は、太陽がそっと顔を出すまで続くのだ。


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