月下の逢瀬
「もしかして、彼氏に怒られるとか?」
先生が首を傾げて言った。
「……は?」
「彼女が目立つのを嫌がる男っているんだよね。
そうだ。今日は彼氏は?」
先生はコーヒーのカップを眺めながら言っている。
「……いない、です」
「え?」
ぽつ、と呟くと先生が顔を上げた。
「やだ、先生。彼氏なんていないし。
普段は面倒くさいから手抜きしてるだけです」
あたしはわざと明るく言った。
彼氏なんて、いない。
理玖は彼氏なんて言っていい関係じゃない。
「あ、そうなんだ。それは悪かった。てっきりいるものだと思いこんでた」
先生が申し訳なさそうに言う。
「いえ、いません。いたらいいんですけどねー」
笑いながら答える。
ふと、先生はもしかしたらこの間、あたしの鎖骨につけられたキスマークを見たのかもしれない、と思った。
だから、彼氏がいる、と?
いると嘘をつけばよかったのかもしれないけど、でも言えなかった。
彼氏と呼べない理玖の顔が浮かんでしまった瞬間、嘘はつけなかった。
先生が首を傾げて言った。
「……は?」
「彼女が目立つのを嫌がる男っているんだよね。
そうだ。今日は彼氏は?」
先生はコーヒーのカップを眺めながら言っている。
「……いない、です」
「え?」
ぽつ、と呟くと先生が顔を上げた。
「やだ、先生。彼氏なんていないし。
普段は面倒くさいから手抜きしてるだけです」
あたしはわざと明るく言った。
彼氏なんて、いない。
理玖は彼氏なんて言っていい関係じゃない。
「あ、そうなんだ。それは悪かった。てっきりいるものだと思いこんでた」
先生が申し訳なさそうに言う。
「いえ、いません。いたらいいんですけどねー」
笑いながら答える。
ふと、先生はもしかしたらこの間、あたしの鎖骨につけられたキスマークを見たのかもしれない、と思った。
だから、彼氏がいる、と?
いると嘘をつけばよかったのかもしれないけど、でも言えなかった。
彼氏と呼べない理玖の顔が浮かんでしまった瞬間、嘘はつけなかった。