月下の逢瀬
乱暴に重ねられた唇から、先生の舌があたしの中に押し入るように差し入れられた。
舌を絡めとられ、唇をなぞられる。
馴れないタバコの苦味が口中に広がった。


「ん……、ふぁ、せんせ……」


背中に回された腕が、あたしの体を抱き寄せる。

何? 何でいきなりこんなことするの?

ぐ、と寄せられた先生の胸元を、必死に押す。身をよじっても、力の込められた腕はあたしを離してくれない。


「ふ……ん、や、だ……っ」


ニットのセーターの中に、するりと手が入ってきた。
脇腹を撫でられて、反射的に体が反りかえる。

先生の手は、力の抜けたあたしのセーターをぐいと掴み、胸元までめくりあげた。
暖かい車内とは言え、外気に触れた肌が少しひやりとした。


「やっ! やだっ」


先生の唇がようやく離れて、叫んだ。


「なっ、何するんですかっ」


先生のいきなりの行動は恐怖で、怯えからなのか涙が溢れる。
ぐいっと頬を伝う涙を拭って先生を見ると、先生の視線があたしの体に向けられているのに気付いた。


「やっ」


慌ててめくり上がったセーターを下ろそうとして、その手を止められる。


「こんなにつける程、独占欲の強い男がいるんだ?」


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