月下の逢瀬
「ごめん。もう一本」
あたしの言葉を無視して、先生はゆっくりとタバコを取り出し、火を点けた。
細長く、煙を吐く。
「せんせ……」
「バレたら困るよな。理玖の彼女は、久世だろう?」
「言わないで。理玖が困る」
「理玖が、ね」
暗くなった外を見ながら、ハンドルを指先でトントンと叩く。
「ふ、む。うん、誰にも言わないよ」
トン、トントン。
「ホント、ですか?」
「ああ。椎名が俺から逃げなければ、ね」
トン。
先生はあたしに視線を戻して言った。
「あたしが、逃げなければ?」
「泣かせちゃったけど、俺は椎名に嫌われたくない。避けられたくないし。
だから、椎名が俺の近くにいるのなら、黙っておく」
どう? と聞く目は、真剣。
あたしは無意識に、息を止めていた。
「近くって……どんな意味?」
息をゆっくりと吐きながら聞く。声は枯れていた。
「俺と寝る?」
心臓が潰されたように、ぎゅうと痛んだ。
あたしの言葉を無視して、先生はゆっくりとタバコを取り出し、火を点けた。
細長く、煙を吐く。
「せんせ……」
「バレたら困るよな。理玖の彼女は、久世だろう?」
「言わないで。理玖が困る」
「理玖が、ね」
暗くなった外を見ながら、ハンドルを指先でトントンと叩く。
「ふ、む。うん、誰にも言わないよ」
トン、トントン。
「ホント、ですか?」
「ああ。椎名が俺から逃げなければ、ね」
トン。
先生はあたしに視線を戻して言った。
「あたしが、逃げなければ?」
「泣かせちゃったけど、俺は椎名に嫌われたくない。避けられたくないし。
だから、椎名が俺の近くにいるのなら、黙っておく」
どう? と聞く目は、真剣。
あたしは無意識に、息を止めていた。
「近くって……どんな意味?」
息をゆっくりと吐きながら聞く。声は枯れていた。
「俺と寝る?」
心臓が潰されたように、ぎゅうと痛んだ。