月下の逢瀬
『二番目でいい』


そう言ったのは、半年前。

あたしは、初めてできた彼氏に捨てられたばかりだった。

「ヤリ捨て」

多分そんな言葉で片付けられるような、思い出も何も残っていない付き合いだった。


やっぱり、好きな人とするべきだった。

あたしは、捨てられた事実より、自分が好きでもない男と寝てしまったのだ、ということが、嫌だった。
真緒が好きだよ、と言う、その言葉に惹かれただけで、何とも思わなかった相手だった。

付き合ってさえいれば、好きになれたかもしれない。
気持ちのなかったセックスも、意味があったと思える日が来たかもしれない。

でも、こうして別れてしまった今、意味はなにもなくなってしまった。

虚しさに泣けた。



別れを告げられた日、放課後の図書室に、一人残って泣いていたあたしを見つけたのが、理玖だった。


< 8 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop