月下の逢瀬
「ホントかなあー?」


「ホントだって。ほら、まだ文化祭の話してるから前向きなよ」


まだ納得した様子のない結衣を無理やり前に向かせて、黒板を見るフリをする。


彼氏、なんていらない。
理玖さえいてくれたらいいんだから。


黒板の『浴衣』の文字に少し胸が躍る。
理玖に、見てもらえたらいいな。

帰ったらすぐに浴衣を用意しなくちゃ。
せっかくだから、新しく買おうかな。
そんなことを考えて、くすっと笑った。


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