月下の逢瀬
『ヤリ捨てされたんだって?』


優しさも気づかいもない言葉。


『何で、知ってるの……』


久しぶりに口をきいた幼なじみ。
それがこんな会話になるとは思ってもみなかった。


『男にも、口の軽いのがいるって知ってたか? ろくでもないのに引っかかったな』


嘲笑なのか、鼻で笑う。


『……馬鹿にしにきたの? どこか行ってよ』


『あんな奴が、好きだったのか』


『理玖に関係ない。もう行ってよ』


『好きかどうか聞いてるだけなんだ。
好きなら好きって言えば済む話だろ』


理玖はあたしの言うことなんてお構いなしに聞く。
一体、理玖は何がしたくて、今あたしに話しかけてるんだろう。

フラれて泣いている、昔の幼なじみをからかいたいの?
今まで話しかけもしなかったのに、何で今なの?


そう考えると、苛立ちを感じた。


『好きでも何でもない。本当に好きな人は、他にいるから』


気づけば、言わなくてもいい本心を言ってしまっていた。


『は? 好きでもないやつとヤレるわけ?』


理玖の声音が一気に怒りを帯びた。


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