この恋、運命です
 盆踊りの輪から二人で少し離れる。

「あんまり長くいると茶化されるから、さっと、ぱっと、話して」
「急かさないでよ」
「だって、優ちゃんの顔見てたらどんな話かなんて分かるから。早く喜ばせてよ俺のこと」

 私の両手を優しく、壊れそうなくらい優しく握りしめて、ニコニコと笑う。悔しいくらいにその笑い声に、笑顔に、夢中になってしまってる。

「しょうがないから、付き合ってください」
「好きになっちゃった?」
「ならないわけないでしょ、あんなにこまめに連絡して来て、私が好きそうな店ばっかり選んできて! それなのに会えないし」

 ぎゅっと強く抱きしめられた腕が、背中が、触れた頬が熱い。

「めっちゃ嬉しい、大切にする。今よりももっと、もっと大切にする」
「ずるすぎるよ」
「お父さんにも挨拶に行かないとね」
「気が早すぎない?」
「早い方がいいだろ、同じ自衛官なんだし。ライバルはお父さんなんだろ」

 後ろの方で、ヒューヒューとか、口うるさく囃し立てるのは、きっと泰斗くんの同僚なんだろう。振り返る勇気はなくて、泰斗くんの肩に顔を埋める。

「好きになっちゃったから、しょうがないよね」
「ひと目見た時から、俺は好きだったよ優ちゃんのこと。それに、優ちゃんも俺のこと好きになると思ってた」
「泰斗くんの言った通りになったのは悔しいけど、本当になっちゃった」
「キスしていい?」

 私の話を遮る唐突な提案に首を思い切り横に振る。

「何言ってるの? ここで? みんな見てるよ? やめて?」
「わかった!」

 と言ったかと思えば、思い切り抱き上げられる。

< 10 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop