この恋、運命です
「春川泰斗二六歳です。えっと、陸自です。あと、普通科です、えっと、大体みんなが想像してる、陸自の活動してる人でーす」

 ズレたメガネを直しながら、口元がかすかに笑う。

 自衛官と出会える居酒屋に来た私は、後悔していた。自衛官なんて付き合いたくない職種第一位だ。私の中では、だけど。

 自衛官との出会いほど、なかなかに難しいものはない。幼馴染だとか、駐屯地内の売店でのバイトだとか、もしくは、自分も自衛隊に入るとか、ハードルが高い。だから、出会わないと思っていた。

 自衛官である父と元自衛官の母。二人の逞しい肉体の遺伝子を引き継いだ私も、自衛官になることを期待されていたとは思う。それでも、私は一般の会社の事務として就職した。

 順番に回っていく自己紹介はあらかた終わったようで、目を輝かせていた友人たちはヘリパイロットだと自己紹介した秋月さんにばかり視線を向けていた。

「えっと、春川さんは」
「いいよ、気を使わなくて。パイロットは人気だし、空自の方が人気だし」
「え?」
「え?」

 てん、てん、てん。二人の間に流れる気まずい沈黙。ビールで流し込んで、春川さんは誤魔化した。

「私は別にパイロットが良いなんて思ってません」
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