この恋、運命です
私、自衛官とは付き合いませんから
各々ほどよく酔い始めたところで、会はお開きとなりそうだった。このままお別れは嫌で、泰斗さんの服の裾を掴んだ。
「このまま、二人で。あ、でも、今日帰るんですか? いや、この時間だから外泊の許可貰ってるか……」
「あー詳しいね、そうやって何人と遊んできたの?」
嘲笑うような冷たい言葉に、心の中が荒れ始めた。冷めた視線にじっと見つめ返せば、泰斗さんの顔に失敗の文字が浮かび上がる。
「えっと、ごめん、余計なこと言った自覚はある。ごめん」
「嫌な思い、したことあるんですか」
「いや、違うんだけど、その、ごめん」
「許しません。じっくり聞かせてもらいましょう、行きますよ」
ぎゅっと手を握りしめて、ガヤガヤと盛り上がってる友人たちに反対の手を振る。きゃーとか言う声が聞こえた気がするけど、聞こえないフリをしながら、抵抗もしない泰斗さんの腕を引いた。
「こんなこと、普通はしません」
「へぇ」
「信じてないでしょ!」
「いや、さすがにだってねぇ、うーん、詳しいじゃん。優ちゃん」
繋いだ手は振り解かれることはなく、すっと握りしめられる。嫌というほどに熱が伝わってきて、頭がクラクラしてきた。
「当たり前でしょ。父も母も自衛官だもの。生まれたのは山形の東根。神町駐屯地、知ってる? あそこが私の生まれ故郷。育ったのは千歳だけどね」
「へ?」
「父は、陸上自衛隊の施設科だったかな、橋とか作る部隊にいるし。母はもう辞めたけど、今でも予備自衛官」