この恋、運命です

 ひょいと軽々しく持ち上げられて、女の子らしい悲鳴が上がってしまった。

「なに、急に」
「優ちゃんってさ、スラッと背が高くて、それで切長の目だからきつく見られがちでしょ」
「そうだね、それとこれが何か関係ある?」
「それでも優しい良い子なんだなぁと思ったら、抱きしめたくなっちゃった」
「これは抱きしめるじゃなくて、抱っこに近い気がするんだけど」

 酔っ払ってる割には、確かな足取りで私を持ち上げたまま泰斗さんは歩き始める。

「重たいでしょ、降ろしてよ」
「このまま攫っちゃおうかなって、あまりにも可愛すぎるんで」
「今の話のどこにそんな要素があったか教えて?」
「ツンデレっぽいくせに、俺に一目惚れして、父親と重ねて好きになっちゃいましたーって目からビーム出してるところ?」
「誰もそんなこと言ってない」
「でも、図星でしょ」

 図星も図星だ。ひと目見た時から、なんか、ビビッと閃光が走ったし。変なことを言った私を庇ってくれるような優しいところにも、めちゃくちゃ惹かれてる。言葉を選びながら話すところも、惹かれていた。でも、それはそれだ。

 私が誘ったくせにこんな事を言うのは、どうかと思うけど私は自衛官と付き合う気はない。かと言って、遊ばれる気もない。

「多分、俺と付き合ったら大変だけど。俺と付き合ってみない?」
「なにそれ」
「だって、なんか俺もビビって来たんだよね。優ちゃんを見た時。パイロットって言葉に惹かれなかったって言うのもあるけど、本当に女の子ってパイロット好きなんだよ」
「珍獣だと思ってない?」

 私の質問に一呼吸。
 
「いや、あ、うーん、ちょっとは思ってる。そんな威嚇しないでよ、取って食べたりはしないから。ゆっくり知って、俺のこともっと好きになって。好きになっちゃったからしょうがないなぁって、諦めて付き合いなよ。そうなるから、きっと」

 本当にそうなるような予感しか、しない。きっぱりと言い切った泰斗さんの顔はニコニコ笑顔で。今日一番の明るい表情だった。
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