【番外編】副社長の一目惚れフィアンセ ~詩織の物語~
私、木村詩織(きむらしおり)は、物心ついた時から自分の寿命を知っている。
みんながそうなんだと思っていたけれど、そうじゃないんだと、知っているのは私だけなんだと気づいてからは、誰にも言わなかった。
何の役にも立たない。
誰も喜ばない。
誰も気づかずに消えていく、魔法のような力。
間違って命の期限を私に教えてしまうなんて、神様は少し抜けているらしい。
けれど、悲観的に生きてきたわけではなかった。
それは、あまりにも漠然としていて実感がなかったからだろう。
病気で苦しい思いをしているわけではなく、医師に余命宣告されているわけでもない。
いたって健康で、友達にも恵まれて、家庭も円満だ。
死が訪れるその日まで楽しく生きていられたらいいと、どこか他人事のように考えていた。
けれど、いざその時が近づいてくると怖くなってくる。
私の命の期限は18歳の12月。
きっと、あと1,2週間。
正確な日にちや死因はわからない。
どうやら神様は抜けている上に大雑把らしい。