「どうか、」

パチパチと、私の知ってる線香花火より少し鈍く、でも確かに光の花が散り始めた。

その熱に照らされる叶永の横顔は楽しそうで。
感傷に浸ってる場合じゃない、と頭を振った。


叶永と過ごす貴重な時間なんだ。全力で楽しまないと損だ。



「……わたしも、やる!火つける!」

「はい!ライター!」

「ライ!………ター、ってどうやって、つかうの?」

「え、もう仕方ないな、貸して!」



意気込んだ矢先にこれである。

いつもそうだ。


まるで、湿気った花火。

みんなみたいに上手く光れなくて、何事もワンテンポ遅れて。


でもそんな私に、「こっちだよ!」「こうやるんだよ!」って、手招きしてくれるのが叶永だった。

人のことをよく見てるんだと思う。

寂しく思った時、不安になった時、真っ先に手を引いてくれた。



「あ、ついた!!エミこれこのままちゃんと持って───」

「……っ、」



弾け出す火花が、滲んで、うまく見えなくなった。

輪郭を伝って落ちる雫は、濃く色づいたアスファルトの一部に飲まれていく。


ありがとう、って言って、ちゃんと花火を見たいのに。

喉が閉まって、少しも上手く紡げない。

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