突然現れた魔女っ子が帰ってくれません。
1.
珍しく部屋のインターホンが鳴った。休みの朝の事だ。
思えばこれが全ての始まりだった。
俺はのぞき穴から来訪者を確認した。男の一人暮らしなので女性のそれに比べると警戒レベルは下がるが、セールスだと面倒だ。
レンズの先には制服姿の配達員が小包みを抱えて立っていた。宅急便らしいと察して、ためらいもなくドアを開けた。
配達員から名前を確認されて、渡されたボールペンで伝票にサインする。四角い箱型の小包みを受け取ると、配達員は一礼して去って行く。
「……三神ジュリ、って。誰だ?」
受け取った包みを凝視し、眉を潜めた。差出人名に全く心当たりがなくて、首を捻った。
宛名書きは“吉良大和様”となっており、俺の名前に間違いないのだが、誰からか分からない。
これは開けるべきだろうか?
俺は唸った。一方的に送り付けてから金を請求される詐欺かもしれない。
小包みをいったん折り畳みテーブルに置き、腕を組んだ。伝票にある内容物は“本”となっていて、これもまた思い当たる節がない。
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