突然現れた魔女っ子が帰ってくれません。
*
「おぉ、すげぇ……っ」
足元に広がる夜の街並みを見つめ、俺は感嘆の声を上げた。キラキラと瞬くネオンの粒が、暗い海の中を泳ぐ魚みたいだ。
初めての経験に、気持ちが昂っていた。
……それにしても妙な安定感だな。
小柄な彼女の肩を持ち、箒にまたがる感覚に早くも慣れている。
空を飛ぶというのは、もっと怖いものだと思っていた。
一本の箒は不安定にしか見えないのに、不思議な安定感がある。
「俺、箒ってもっとグラつくもんかと思ってたよ」
ジュリは赤いリボンを風に揺らし、「それはアレですよ」と言って笑う。
「安定感を得られるように、箒に魔法をかけてありますから」
「あ、そうなんだ」
見習いとはいえ、さすが魔女だ。
小一時間、空中散歩を楽しみ、また部屋に戻った。
俺たちは眠るのを我慢し、夜中まで本と格闘した。
翌朝。腹に重みを感じて目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。
布団も敷かずにあのまま寝てしまい、俺の腹を枕にジュリが寝息を立てていた。
……またヨダレ垂らしてるし。
彼女の頭に手を添えて、クローゼットに横たえた。毛布をかけて一度トイレに立つ。
課題の締め切りは今日だ。