突然現れた魔女っ子が帰ってくれません。
 ……え? なんだ??

 一瞬、胸の内が熱くなり、俺は訳も分からず心臓を押さえた。

 教師はハァ、と大仰なため息をついた。

「残念だけど、三神さん。この青年に魔法はかかっていないわ」

 え。

「そんな」とジュリが力なく呟く。教師はカツカツとヒールを鳴らし、俺を通り越した。

「その代わり……」

 振り返って見ると、教師がジュリの肩に手を置き、耳元で何かしらを囁いた。

「え」とジュリが目を見張り、驚いて肩を揺らした。

「先生、それ本当ですか?」

「ええ。課題対象が“こうなっては”続けられないわ。よってこの課題は終了。新たな課題を与えるから、それまで待機するように」

「……あの、それじゃあ、進級は?」

「ひとまずは保留という形を取らせてもらうわね? 次の課題次第で決定するから心するように」

「あ、はい。分かりました!」

 教師がジュリに何を言ったのかは分からなかったが、彼女は進級できないわけでも留年になるわけでもなさそうだ。

「そういえば三神さん」

 不意に教師が思い出したように言った。

「杖は新調した?」

「え?」
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