愛よりもお金が大事。
「分かった。じゃあ一緒に帰ろう?
方角一緒だから、夏村の家の近く迄タクシーで送ってく。
もう電車ないから」


からっとした笑顔で、冬野はなんて事ないように言うけど。


「え、冬野は泊まっていきなよ?」 


宿泊でこの部屋取ってるだろうし。
もったいない。


「一人で泊まっても意味ねぇし。
それに、目的は達成したから」


その言葉に、先程迄の情事を思い出し、妙に照れ臭くなる。


「でも、私は冬野とは付き合えないよ?
酔ってたから、ちょっと勢いでこうなってしまったけど」


付き合えない以上。
冬野に自分の気持ちを伝える事はしない。
そうやって、お酒のせいにする。


「俺は、絶対にお前の事を諦めないから」


「そう言われても……」


困ってしまって、それ以上何も言えなくなったのは…。


冬野のその気持ちや言葉が嬉しくて。
だから、諦めて、とは口に出せなくて。


「…じゃあ、冬野が飽きる迄、時々こういう事してもいいよ?
ヤル事やってたら、そのうち私に飽きると思うし」


こんな事を口にしてしまった。


きっと、女の私と違って、男の冬野はそうじゃないかな?と思う。
何度も体を許せば、そのうち私に飽きるのでないか、と。


けど、私は逆に、ますますこの人を好きになって深みにハマリそうだけど。


それでも、またこうやって冬野と会いたいと思ってしまった。
会社じゃなくて、こうやって二人っきりで。


キスしたいし、抱かれたい。
冬野透に。


「じゃあ遠慮なく」


何かの契約を交わすように、冬野は私にキスをして来た。


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