愛よりもお金が大事。
父親が亡くなり、家のローンは団信の保険で無くなり、少しだけど父親の入ってた生命保険が下りた。
その時は、まだそこまでうちの家計は圧迫してなかった。
母子家庭手当てや遺族年金もあるし。


志望通りに、私は大学へと進み、それなりに青春を謳歌して、
今の会社へと無事に就職した。


それと同時期くらいに、母親はフルで働いていたスーパーのパートの他に、
夜のビルの清掃を始めた。


私も働き出したし、家にお金を入れるから、そんなに無理して働かなくても?と母親に言うと、
蓮(れん)と蘭(らん)の学費があるから、と言われた。
出来れば奨学金を借りずに、二人共大学迄出してあげたい、と。


私の10歳下の、弟と妹は双子で。
この子達の大学への進学費用もそうだけど、成長とともにそれなりにお金も掛かるようになって来ていた。


父親の保険金は私の大学費用で殆ど消え、母親のパート代だけでは、毎月ギリギリで。


「私が大学なんて行ったから。
なんで高校出てすぐに働かなかったのだろう」


後悔し、そう漏らす私に。


「お母さん高卒で、早くに結婚して、それと同時に勤めていた会社も辞めて。
だから、歳も歳な上大した資格もないから、今も非正規の仕事にしか就けなくて。
だから、その分、同じ女の花梨にはちゃんと大学出て色々資格もそうだけど好きな事をして、社会での経験を積んで欲しいの」


母親にそう言われ、少し気持ちが楽になったけど。


そんな矢先、母親が心筋梗塞で倒れて…。


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