愛よりもお金が大事。
「飽きなかったら、どうするんだよ」


クスクスと、私の耳元で笑うから、耳に掛かる息でくすぐったい。
冬野の吐くその息が熱くて、なんか興奮する。


「じゃあ、ずっとこうしていればいいんじゃない?」 


「なら、俺のものになれよ。
結婚しよ?」


「ダメ」


いつも、会話は堂々巡りで。
なんとなく、最近の冬野はそうやって私にフラれるのを楽しんでいる節がある。
今も、ちょっと楽しそうに笑っている。


「私、そろそろ帰るね?」


「ヤッたらすぐ帰るって、不倫してるみたい」


笑いながら、冬野は私から身を離した。


「だって。もう居ても仕方ないでしょ?」


「いや。俺はまだまだ一緒に居たいけど。
でも、夏村がお母さんや双子達が心配なの分かるから、大人しく帰らせるけど」


「うん。ありがとう」


そういえば。
元彼は、こうやって帰ろうと私がすると特に何も言わず、
ちょっとつまんなさそうな顔をしていたな。


「じゃあ、送ってく」


冬野は、いつも車で送ってくれる。
そのつもりだからか、二度目からは冬野はお酒を飲んでいない。
今夜も素面。私もそうで。二度目からは、酔った勢いなんかじゃない。


「夏村、早く服着ろよ?」


そう言われ、そうだった、と、ベッドの近くに置いていた自分の服を拾った。



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