愛よりもお金が大事。
「午後からどこもこの会議室使う予定なさそうだから、誰も来ないと思うけど」


それは、鍵を閉めた事に対して言っているのだろうか?


「今夜会えないなら、今ここで」


「え、冬野何言って――」

その言葉を遮るように抱き寄せられ、すぐに唇を奪われる。
それは、いつもの冬野のキスとは違い、とても乱暴で。
怖い、と思ってしまう。


柔らかいはずの唇も、強く当てられると、少し痛くて。
無理矢理私の唇を開いて、舌を口内に入れられる。


いつもとは違う冬野のその感じに戸惑っていると、
抵抗も出来ず、長机に私は押し倒された。


半分だけ机に体を預けた不安定な状態で。
冬野は私の首筋辺りに顔を埋め、私のスーツのジャケットのボタンを外して行く。


まさか、本当にここでする気?


「ちょっと、冬野辞めて!」

「辞めない」


冬野は私から体を離して真っ直ぐ立つと。
自分のネクタイを片手でほどく。


そのネクタイは、私がバレンタインにあげたもので。
最近、よく付けてくれている。
冬野によく似合う、ネイビー色。


ネクタイを机に置くと、冬野は着ているスーツのジャケットも脱いで、同じように机に置いた。


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