愛よりもお金が大事。
「あ、あのさ、冬野…。
やっぱり会社でこんなの、ダメだと思う」
私は体を起こし、言っても無駄なのだと分かっていても、そう言葉にしてしまう。
「ダメだろうな」
冬野はやはり、そんな私の言葉なんて、右から左って感じに聞き流している。
「常識的に考えて、会社でこんな事するのよくないと思う」
「取り引き先の男漁ってる奴に、言われたくないけど」
それは、先程の私に対しての嫌味だろうな。
私も仕事の取り引き相手に色目使って、やってる事最低だと思うけど。
目の前の冬野は、そんな私を軽蔑しているのではなく、嫉妬している。
「一体、どれだけ惚れさせんだよ…」
苦しそうに吐き出されたその言葉に。
私だって、と思う。
私だって苦しいくらい、この人に惚れている。
再び、私は机に押し倒される。
それは、先程よりも優しくて、私も呑まれたように体から力を抜き、そっと目を閉じた。
同じように優しく、冬野の唇が私の唇に重なった時。
私達の居る会議室の扉が、ガチャガチャと音を立てた。