愛よりもお金が大事。
「あれ?鍵閉まってる」


女性の声が扉の向こうから聞こえて来て、


「えー、どこも使ってないはずじゃないの?
誰か中に居るの?」


と、男性の声も。


これはヤバい、と慌てて私と冬野は体を離した。
すぐに、私はスーツのボタンを閉めて、何事もなかったように扉に近付き、解錠して扉をこちらから開いた。


「え?!何?」


突然開いた扉に、声の主と思われる男性社員は仰け反った。


その男性社員の天使のような可愛い顔を見て、あ、副社長だ!と気付いた。


「えっと、確か営業の…夏…」


「営業の夏村さん!
ほら?社長の2番の!」

副社長の横に居た女性社員が、副社長に教えるようにそう口にした。


社長の2番ってなんだろう?と思うけど、
とりあえず、今はそれはいいや。


この可愛い副社長は、うちのグループの会長兼本社社長の、実の弟。
社長もそうだけど、この人も若い。
三十代半ばくらい。


そして、その横の女性社員は、副社長の奥さん。
夫婦で同じ会社で働いている。


奥さんは元からこの会社で働いていて、去年副社長と結婚されて、辞めずに今も。


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