愛よりもお金が大事。


「お疲れさま」


そう言って、冬野は部屋の扉を開いて私を迎えてくれる。
冬野は帰って来たばかりなのか、ジャケットとネクタイはないが、スーツ姿のまま。


「私、今日定時で終わったから。
ちょっとハンバーガー食べて。これそのお土産」


有名なファストフード店の名前が入った紙袋を、冬野に渡す。


「サンキュー」


そう言って部屋の中に入って行く冬野に付いて行くように、
私も部屋に入る。


冬野はリビングのローテーブルの上に、私が渡した紙袋を置くと、床に腰を下ろした。
私も冬野と向かい合うように、腰を下ろした。


「夏村、もうこんな事辞めよっか」


何の前置きもなく言われた言葉に、一瞬、何を言われたか分からなくて。


「冬野、今日のあれの事?
そりゃあ、会社の会議室であんな事ダメだし、まさか、副社長に見られて、私達、何か処分受けるかもしれないよね?」


「それもそうだし。
こうやって、二人で会う事も」


やっぱり、そう言う意味なんだ。


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