愛よりもお金が大事。
「なんで、急に?
もしかして、栗原さんの事好きになった?」


全くないと思っていたけど、栗原さんの言うように、冬野は栗原さんの事を本当に…。


「栗原?ああ、一課の若くて可愛い派遣の子の事?」


栗原さんは関係ないみたいだけど。


冬野は他の課の栗原さんの事をそうやって可愛い子だと覚えている。
なんだか、嫌だな。


「栗原さんじゃなくても、私の他に好きな女の子でも出来た?」


「そんなわけないだろ」
 

確かに、今日の昼に冬野に好きだと言われたばかり。
言われなくても、そんなわけないだろうとは、分かっているけど。


じゃあ、なんで急にって?


「…もしかして、副社長とああやって鉢合わせて、保身の為に私を切ろうとしてる?」


私とは完全に関係を断ち、もし、今日の事で上の人達かから追求されても、誤解だと言い逃れる為に…。


なんて、事はないだろうな。


「…俺、嫉妬で変になりそうで。
いつもの俺なら、会社で夏村にあんな事しないはずなのに…」


そう言われ、今日の昼間の事をさらに思い出した。


色々あってすっかり忘れていたが。
元々、私があけぼし商事の営業マンの七種さんにアプローチしている所を冬野に見られて、嫉妬した冬野は私を会議室に…。



「まだ、密かに夏村に片思いしてただけの頃なら。
俺、そこまでしなかったかもしれない」


「うん…」


私も冬野と全く同じ気持ちだから、分かる。
体の関係を持って、さらに好きになり。


大きくなった、独占欲。



< 54 / 96 >

この作品をシェア

pagetop