愛よりもお金が大事。
「俺、このままなら、ストーカー一直線かも。
今日みたいに、お前が他の男と上手く行きそうになったら、邪魔して…」 


「うん…」


私も逆なら、同じ事をするかもしれないから、冬野の気持ちは分かる。


「俺と付き合えないなら、もう終わりにしよう?」


私は冬野とは付き合えない。


こだわりを捨てて、冬野と付き合いたい自分もどこかにはいるけど。


「分かった」


なるべく、あっさり。
軽くそう言葉にする。


「夏村はさ、こうやって二人で会うようになってから、
ちょっとくらいは俺の事好きだな、って思ってくれた事ある?」


そんなの、ちょっとじゃなく、凄く沢山思っている。


だけど、冬野と付き合えない私は、それを口に出来ない。


なのに。


「…ちょっとくらいは、あるよ」


ほんの少しだけ、本心を吐き出した。


「そっかぁ」


冬野は、悲しそうに笑った。


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