愛よりもお金が大事。
接待は、二時間程で終わった。


こちらが接待を受ける側だけど、大企業のあけぼし商事の会長が相手なので、
岡崎社長もそうだけど、私も高田君もかなり相手に気を遣っていた。


一人数万円はしそうな老舗の料亭で懐石をご馳走になり。
ほろ酔い気分で、冷たい夜風に当たる。


あけぼし商事の浅村会長を乗せたタクシーを見送り、
岡崎社長、高田君、私だけが店の前に残された。



「あ、ちょっと、一件電話してくる」


岡崎社長はそう言ってポケットからスマホを取り出し、私達から離れて行った。
そうなると、私と高田君の二人になる。


「夏村、凄い緊張してなかった?
見てて、ちょっと面白かった」


同期だからか、高田君はこうやって気さくに話し掛けてくれる。


「そりゃあ。
だって、高田君と違って、普段、企業の社長や会長なんかと接する機会なんて、ほぼないし。
緊張して、余計に酔いが回っちゃった」


社長秘書の高田君と同じように、私もお酒を飲まないつもりだったけど。
岡崎社長とあけぼし商事の浅村会長に勧められ、
逆に飲まないと失礼になりそうな雰囲気だったので、飲んでしまった。



「夏村、けっこう酒豪なんだろ?
冬野が言ってた」


そういえば、高田君は冬野と仲が良かったな。
高田君もオンラインゲーム仲間らしいし。
その繋がりからの、冬野と岡崎社長、なのだろう。


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