孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
自宅に到着したのは午後九時頃で、沢木さんはとっくに帰っているので室内には誰もいない。
とりあえずリビングに入って奏飛さんはジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めながらソファに座る。そして「こっちにおいで」と私を呼んだ。
バッグを置いて言われた通り隣に座ると、彼はゆっくり口を開く。
「……生みの母親にとって、俺の存在は迷惑そうだった」
ぽつりとこぼれた第一声はなかなかに重いものだったけれど、本当のお母様について話し出す奏飛さんに私は目を見張った。
「直接ひどいことを言われたわけじゃない。でも頼れる人もいないし金はかかるし、自分の好きなこともできないってよく嘆いていて、〝お前がいるせいだ〟って言われている気がした」
子供ながらに責任を感じていたのだと思うと、やりきれないし胸が痛い。
無表情で淡々と語る彼は、心が干上がっていてもなにも感じなくなっているように見えて、私は耳を傾けながら唇を結ぶ。
「その母親が病気で亡くなって、引き取られた家は異常なほど金持ちで。ひもじい思いはしなくなったけど、俺が思う〝温かい家族〟ってやつとはまた違っていた。片親だった時も、引き取られてからも周りはうるさいし、どこへ行っても同じだと思った」
とりあえずリビングに入って奏飛さんはジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めながらソファに座る。そして「こっちにおいで」と私を呼んだ。
バッグを置いて言われた通り隣に座ると、彼はゆっくり口を開く。
「……生みの母親にとって、俺の存在は迷惑そうだった」
ぽつりとこぼれた第一声はなかなかに重いものだったけれど、本当のお母様について話し出す奏飛さんに私は目を見張った。
「直接ひどいことを言われたわけじゃない。でも頼れる人もいないし金はかかるし、自分の好きなこともできないってよく嘆いていて、〝お前がいるせいだ〟って言われている気がした」
子供ながらに責任を感じていたのだと思うと、やりきれないし胸が痛い。
無表情で淡々と語る彼は、心が干上がっていてもなにも感じなくなっているように見えて、私は耳を傾けながら唇を結ぶ。
「その母親が病気で亡くなって、引き取られた家は異常なほど金持ちで。ひもじい思いはしなくなったけど、俺が思う〝温かい家族〟ってやつとはまた違っていた。片親だった時も、引き取られてからも周りはうるさいし、どこへ行っても同じだと思った」