孤高の御曹司は授かり妻を絶え間なく求め愛でる【財閥御曹司シリーズ黒凪家編】
「それなんですけど、私がケンカを買ってしまったこと、きっとお義母様たちの耳にも入ってますよね?」
「まあ、注目されてたしね……」

 苦笑いする香苗さんの様子からして、やっぱり私の失態は知られているだろう。あれ以降ご両親とはしっかり会えていないので、次回会った時は怒られる覚悟をしておいたほうがよさそうだ。

 私はがくりとうなだれる。

「はぁ……今度の食事会が怖い」
「深春さんは、たぶんご両親に気に入られてるから大丈夫よ」
「どこがですか!?」

 つい食い気味に返すと、香苗さんはクスクス笑って「なんとなくね」と言った。申し訳ないけれど、説得力ないですよ……。

 彼女はフォークを置き、どことなく覇気のない表情になってまつ毛を伏せる。

「私はダメ。気を遣いすぎていつも言われた通りのことしかできないし、いまだにお義母様たちと打ち解けられていないもの」

 意外なひと言に、私はキョトンとして問いかける。

「言われた通りにするのが正解なんじゃないんですか?」
「型にはまるだけがいいとは限らないわ。私は早く、次の結果を出さないと……」

 最後のほうはひとり言のように呟いて、彼女は表情に影を落とした。〝次の結果〟というのはどういう意味なのだろう。
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